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文献を編集する
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ここでは文献の書誌情報の編集方法について述べます。
本節は以下のトピックで構成されています。
新規文献をデータベースに追加するには、メインウィンドウ中上側にある <新規文献追加> ボタンを押すか、[文献項目 - 新規文献の追加] メニューを選択してください。
文献キーが “_untitled_nnnn” (nnnn は数値) となった空欄の文献が作成され、編集モードに入ります。
新規文献の追加はデータベースに対して行います。
ライブラリやグループを選択している時に新規追加を行うと、開いているデータベースが一つのときはそのデータベースに追加し、複数を開いている時は追加対象データベースの選択肢が出ます。
まず最初に文献形式 ‘bibtype’ を指定してください (基本情報の右上)。
デフォルトでは文献形式として ‘ARTICLE’ 等、BibTeXの標準形式が選択可能です。
リストにない形式は直接入力することも可能ですが、特殊なケースでない限り環境設定の文献形式で新規登録しておいたほうが良いでしょう。
ところで、新規に文献を作成したとき、詳細パネルは自動的に編集モードに入ります。
編集モードでは、メインウィンドウ下方の鍵付きのボタン(編集ボタン)がロック解除の表示になり、入力サポートパネルがウィンドウ下方に現れます。
BibCompanion起動時は文献の不用意な編集を防ぐために編集ロックの状態になっています。
文献を編集するときは編集ボタンをクリックして編集可の状態にするか、[文献項目 - 文献編集可能にする] メニューを選んでください。
文献リスト中で文献をダブルクリックしても編集モードに入ります。
編集を完了したときは、編集ボタンをクリックして再びロックするか、[文献項目 - 文献編集不可にする] メニューを選んでください。
詳細情報パネルの表示は編集可の状態と不可の状態で異なります。
編集可のときは入力したTeXコマンド類はそのまま表示されます。
一方編集不可の状態の時はTeXコマンド類は可能な限りユニコード文字に変換されて表示されます。
なお、編集不可のときもテキストを選択してコピーすることは可能です。
一部の文献形式や文献フィールドの使い方については下記に簡単に紹介しますが、詳細はBibTeXの書籍やwebサイトを参考にしてください。
全てのフィールドはTeX形式での入力を前提としています。
- ARTICLE:
- 論文誌に掲載された論文。
- BOOK:
- 出版社から出版された書籍。
- INBOOK:
- 書籍の一部。例えば、ページ範囲や章など。
- INCOLLECTION:
- 書籍の一部で、単独のタイトルや著者があるもの。
- INPROCEEDINGS:
- 学術講演会などのプロシーディングの一部 (CONFERENCEも同様であるが、これは互換性のために残されているので、通常はINPROCEEDINGSを使うことが望ましい)。
- bibkey (文献キー):
- 文献を参照するときのキーとなる固有の名前(参照名)で、必ず入力を行う必要があります。
文献キー文字列には空白やコンマなどを含むことはできません (コロン、ハイフン、アンダースコア等は可)。
BibCompanionには入力された書誌情報から文献キーを生成する機能があるので、手入力を行うよりもこちらを用いたほうが統一的な名前を付けることができて便利です。
なお、BibTeXの定義では文献キーはフィールドの一つではないのでBibTeXの書籍等を参照するときは注意。
- author:
- 文献の著者欄。
複数の名前があるときは必ず “and” で区切り(例: “H. Nakahara and M. Ichikawa and A. Ichimiya and Y. Saito”)、コンマ等は使用しないでください (人物名中にコンマが入るケースも多々あるので、コンマでは区切ることができない)。
原則として全ての著者を列挙すべきですが(省略するかどうかはリストを作成するときに決める)、あまりにも多くて現実的でないときは、リストの最後を “and others” とします。
BibCompanionには著者のスマートペースト機能があります (デフォルトでON)。
この機能を使うと、PDFやwebから著者リストをコピー&ペーストしたときに自動的に上記条件に合うように変換が行われます。
例えば、 “J. Slezák*, P. Mutombo, V. Cháb” という文字列を著者欄にペーストすると “J. Slez\'{a}k and P. Mutombo and V. Ch\'{a}b” に変換されてペーストされます。
著者名の区切りのコンマだけでなく、ユニコードで記述されたアクセント付きの文字などもTeX形式へ自動的に変換されます。
また、氏名に用いることがない数字や記号類(これらは所属の識別符号として用いられることが多い)は自動的に取り除かれます。
既に名前が入っている欄に追加でペーストを行った場合も、著者間の “and” が自動的に追加されます。
なお、スマートペースト機能は5文字以上の文字列をペーストしたときのみ機能します。
短い名前や上書きペースト(文字列を選択した状態での置換ペースト)では機能しないことがあります。
また、ペーストする文字列が既にTeXコマンドを含むと判断された場合にも機能しません。
スマート機能は環境設定の一般設定でON/OFFできます。
- editor:
- 編者のリストです。
入力形式、スマート機能など全て ‘author’ フィールドに準じます。
- title:
- 文献(論文、書籍)のタイトルです。
BibCompanionにはタイトルのスマートペースト機能があります (デフォルトでON)。
この機能を使うと、PDFやwebからタイトルをコピー&ペーストしたときに様々な変換が行われ、入力時の手間を省くことができます。
例えば、“Spin system in KCu5V3O13 on Si(111)-(√21×7)” という文字列をタイトル欄にペーストすると、“Spin System in {KCu}$_5${V}$_3${O}$_{13}$ on {Si(111)-($\sqrt{21}\times$7)}” に変換されてペーストされます。
例からわかるように、アクセント付き文字やギリシャ文字、数学記号類はTeXコマンドの形式に変換されます。
更に、H2O等の化学式も自動的に判断して、適宜上付きや下付きに変換します。
その他、各単語の頭文字は大文字に変換され、固有名詞や大文字のみで構成される単語は中括弧で括られます。
これらの変換は大概うまく動作しますが、必ずしも完全ではありません。
誤った判断をしていないかどうか常に確認をしてください。
著者のスマートペースト機能同様、5文字以上のペーストでないと機能せず、また、ペーストする文字列が既にTeXコマンドを含むと判断された場合にも機能しません。
スマート機能は環境設定の一般設定でON/OFFできます。
- booktitle:
- ‘INCOLLECTION’ 等の文献形式を選択した場合の書籍のタイトルです。
個別の論文や記事等のタイトルは ‘title’ フィールドに記述します。
スマート機能は ‘title’ フィールドと同様に機能します。
- journal:
- 論文誌などの雑誌名です。
一般には雑誌名はマクロで記述します (雑誌名の表記を統一するため)。
マクロの使い方のトピックを参照してください。
- publisher:
- 本の出版者名(‘Addison-Wesley’ 等)です。数が少なければ直接入力しても良いですが、基本的には ‘journal’ 同様マクロを利用したほうが表記の統一ができて良いでしょう。
- address:
- 出版社などの住所(‘New York’ 等)です。大きな出版社では都市名までしか書きません。
- year:
- 文献の発行年です。4桁の西暦を書きます。
- pages:
- 文献が記載されているページ番号です。‘123--456’ のようにページ範囲で書くこともできます (できるだけ範囲表記したほうが良いでしょう)。
- annote (詳細表示の「注釈」タブの中身):
- 注釈です。
キーワードを書いたり、場合によってはアブストラクトの文章をそのまま貼り付けることもできます (但し、この場合に文中にTeXの特殊記号があるとトラブルになるので注意してください)。
このフィールドはBibTeXでは使用していませんので、自由に使って構いません。
なお、BibCompanionはこのフィールドに絞った検索ができますので、キーワードなどを入れておくと便利です。
- email:
- 電子メールのアドレスです。詳細は添付ファイルの節を見てください。
- url:
- URL (webページのアドレス) です。詳細は添付ファイルの節を見てください。
- file:
- 添付ファイルのファイル名(含むフォルダのパス)です。詳細は添付ファイルの節を見てください。
それぞれのフィールドは詳細表示パネルの各タブ(「基本情報」、「追加情報」、「注釈」、「添付」)で入力します。
「直接入力」タブでは通常では表示されないフィールドも含め、任意のフィールドを作成、編集できます。
- 基本情報:
- 文献の基本的な情報を入力するタブです。
表示内容は文献形式毎に異なります。
標準のBibTeX文献形式で必須となっているフィールドはフィールド名が黒字で、オプションとなっているフィールドは青字で表示します。
なお、必須となっているフィールドが空欄でも警告などはしません。
あくまでも目安として使ってください。
なお、ここで表示するフィールドは環境設定の文献形式で変更可能です。
- 追加情報:
- 追加情報(オプショナルなフィールド)を入力するタブです。
ここで表示するフィールドも上記同様カスタマイズ可能です。
- 注釈:
- ‘annote’ フィールドです。
上記で述べたように、ここには様々な情報を自由に記述できますが、キーワードなどを入れておくと便利でしょう。
なお、入力時には改行やタブキーを入れることが可能ですが、次回読み込み時には全てスペースに置換されてしまいますので、改行で書式を整えるといったことはできません。
- 添付:
- 電子メール、URL、添付ファイルを入力します。これらの入力方法は次節を参照してください。
- 直接入力:
- 直接編集ではBibTeXのフィールドを直接編集します。
ここでは他のタブでは表示されないフィールドを作成、編集することができます (BibCompanionが内部で使用している ‘mark’ や ‘modified’ 等のフィールドも見れます)。
ここでの書式はBibTeXに準じます。
なお、上記で書いたように ‘bibkey’ は本来フィールドではないため、ここでは編集できません。
文献が編集モードのとき、メインウィンドウの下方に(下方に十分な空間がないときは上方に)入力サポートパネルが表示されます。
パネルにはマクロ入力メニュー、文献キー生成ボタンと3つのタブに分類された入力サポートボタンがあります。
フィールドの編集中であれば、どこでもマクロ入力メニューを使用することが可能です。
マクロメニューはセパレータで分けられた [マクロ編集]、[データベースマクロ入力]、[共通マクロ入力] の3つの部分に別れています。
[マクロ編集] はデータベースマクロを編集します。
データベースマクロは各データベースファイルに記録されているユーザ定義のマクロで、ファイル中では @STRING のブロックとして保存されています。
マクロの編集の仕方は後述します。
一方、共通マクロはデータベースに依存しないマクロ定義で、通常はBibTeXスタイルファイル(bstファイル)に記録されているものです。
共通マクロは環境設定の共通マクロのタブで編集します。
マクロの使い方は下記のトピックを参照してください。
入力した書誌情報から文献キーを生成するときに使います。
詳細は下記を参照してください。
フィールド編集中に入力サポートボタンのどれかを押すと、カーソル位置にボタンの内容(のTeXコマンド)が入力されます。
入力サポートボタンは内容によって「アクセント文字」、「ギリシャ文字」、「その他」に別れていますが、使い方は基本的には同じです。
アクセント文字のボタンはアクセント名を書いた入力ボタン(14個の長めのボタン)と個別の文字が表示された11個のボタンがあります。
フィールド中の1文字を選択し、アクセント名を書いたボタンを押すと、選択した文字にアクセントをつけることができます。
文字が選択されていない場合にはデフォルトの文字(ボタン中に表示された文字)が入力されます。
個別の文字のボタンは、その文字自身をカーソル位置に入力します。
ギリシャ文字の場合もボタンにかかれた文字をカーソル位置に入力しますが、ギリシャ文字は数式モードである必要があるため、通常は数式モードの記号 ‘$’ で囲まれます。
カーソル位置が既に数式モード中である場合には ‘$’ は入力されません。
その他のボタンの多くは数学記号です。
これらのボタンのうち、ボタン名に ‘A’ が記載されているものはパラメータを必要とするボタンです。
入力されている文字のうちパラメータとしたい部分を選択して該当するボタンを押すと、選択した文字をパラメータとしてTeXコマンドが生成されます。
例えば、‘31’ という文字列を選択して [√A] ボタンを押すと、‘$\sqrt{31}$’ という文字列に置換されます。
あらかじめ文字列を選択していないときにはデフォルトのパラメータが用いられます。
また、パラメータを持たないボタンの場合には、ボタンに書かれた文字そのものが入力されます。
なお、これらのボタンもギリシャ文字同様、必要に応じて数式モードの記号 ‘$’ が入力されます。
その他のグループの30個のボタンは全てカスタマイズ可能です。
カスタマイズの方法は入力サポートボタンのカスタマイズを参照してください。
各フィールドのデータを入力後、入力サポートパネルの <文献キー生成> ボタンを押すか、[文献項目 - 文献キー生成] メニューを選ぶと、現在編集中の文献について入力された書誌情報を元に文献キーを一定のルールに従って自動生成します。
また、文献リストで文献を選択(複数可)し、[文献項目 - 選択文献の文献キー生成] メニューを選ぶと選択した文献の文献キーをルールに従って付け替えます(この場合でも文献編集可能状態である必要があります)。
デフォルトでは生成される文献キーは以下の3項目をコロンで区切ったものになります。
- 第一著者の姓と名(名は頭文字のみ)
- 省略された(頭文字)雑誌名や出版社などの名前と巻号(もしあれば)
- 発行年
例えば、以下のような書誌情報が設定されていたとすると、
- author = "Hitoshi Nakahara and Ayahiko Ichimiya",
- journal = "Japan. J. Appl. Phys.",
- volume = "34",
- year = "2003",
生成されるキーは “NakaharaH:JJAP34:2003” となります。
生成ルールは環境設定の一般設定でカスタマイズ可能です。
フィールド内でマクロを使う
マクロは同じ内容がいつも使われる ‘journal’ や ‘publisher’ フィールドの入力を容易にし、表記の統一に役立ちます。
また、雑誌名の表記については論文誌によって異なる場合があります。
例えば、“Surface Science” という雑誌は通常 “Surf. Sci.” と省略されることが多いですが、論文誌によっては “Surface Sci.” と略するルールの場合もあります。
このようなときもマクロを使用していれば、マクロの定義を書き換えるだけで全ての文献の表記を切り替えることが容易です。
マクロを使用するに先立ってまずマクロを定義しておく必要がありますが編集方法は後述しますので、ここでは定義が済んでいるものとしてその使い方をまず説明します。
マクロの入力方法はBibTeXに準じています。以下に簡単に説明します。
- ‘bibkey’, ‘file’, ‘url’ と ‘email’ フィールド以外はどのフィールドでもマクロの使用は可能です (ユーザ定義フィールドもOK)。
- マクロを含むフィールドは ‘@’ で始める必要があります (例: [@PRL])。
一つのフィールドで複数のマクロを使用することも可能です。
なお、‘@’ はそのフィールドがマクロを含むことを示す符号であり、その単語がマクロであることを示すものではありませんので注意してください (下記の例を参照)。
- 複数のマクロを使用するときは [@SS # LETTERS] のように ‘#’ で繋ぎます。
- マクロと通常の文字列を組み合わせることも可能です。
この場合、文字列は必ず二重引用符で括る必要があります。
例えば、[@SS # " Lett."] や [@"2005 " # JAN # "--" # FEB] といった使い方ができます。
なお、‘#’ でマクロ同士や文字列を結合した場合に空白は挿入されませんので、適宜文字列やマクロ自身に空白を入れておく必要があります。
- マクロ名の大文字小文字は無視されますので、どちらでも構いません。
マクロは手で入力することも可能ですが、入力サポートパネルのマクロ入力メニューを使用することもできます。
メニューからマクロを挿入すると、自動的に先頭の ‘@’ が入力されます。
既に文字列が入力されている場合には、既存文字列は二重引用符で括られ、‘#’ で結合されます。
既にマクロが入力されている場合も同様に ‘#’ で結合されます。
マクロ挿入メニューはマクロを使用できないフィールドでは使用不可の状態になります。
入力サポートパネルのマクロ入力メニューから [マクロ編集] メニューを選ぶか、[ファイル - マクロ編集] メニューを選ぶと、下図のような編集ウィンドウが現れます。
リストにはマクロ名とマクロ定義の2つのカラムがあります。
マクロ名はマクロを参照するときに使用する名前、マクロ定義はそのマクロを使用したときに展開される文字列です。
既存のマクロを編集するときは、該当する箇所をダブルクリックしてください。
リスト最下部の空欄をダブルクリックすると、マクロ定義を追加することも可能です。
また、<新規マクロ挿入> ボタンを押すと、現在選択されているマクロの直下に新規のマクロを作成できます。
マクロ名に空白を指定するか、マクロ行を選択して <delete> キーを押すと、そのマクロは削除されます。
マクロ名はアルファベットで始まっている必要があり、空白や記号類(‘#’, ‘$’ 等)を含むことはできません (ハイフンとアンダースコアは使用できます)。
同一名のマクロは作成できません (赤字で表示されて確定できません)。
マクロ名は大文字小文字の区別はなく、確定時に自動的に全て大文字に変換されます。
マクロを参照する場合にも、大文字小文字は区別されません。
マクロ定義は文字種の制限はありませんが(記号類はTeX形式に準ずる)、引用符や括弧はバランスしている必要があります。
マクロ定義は他のマクロを含むことも可能です。
その場合にはフィールド中でのマクロの使い方と同様、[@_J # " of the " # _PHYS # " Society of " # _JPN] のように ‘@’ で始め、マクロや文字列は ‘#’ で繋ぎます。
マクロ定義中にマクロを含む場合には、参照されるマクロの定義は必ず先に(リストの上方)で定義されている必要があります。
定義の順序はマクロの行(複数可)をドラッグすることで変更できます。
後述するようにマクロはアルファベット順にソートできますので、ソートしたときに必ず先頭に配置されるようにマクロ内で参照されるマクロは上記の例で示したようにアンダースコア(‘_’)で始めるようにすると良いでしょう。
- <定義内を検索> フィールド
- このフィールドに文字を入れると、マクロ定義内を検索して入力した文字を含む行を選択、表示します (検索結果が複数ある場合は、最初の行までスクロールします)。
なお、マクロ名は検索しません。
- <マクロ名でソート> ボタン
- このボタンを押すと、マクロ名でアルファベット順にソートを行います。
なお、月の名前(JAN, FEB...)は月順で常に先頭に並びます。
- <取り込み> ボタン
- 既存のデータベースからマクロを取り込むときに使用します。
このボタンを押すと下図のようなダイアログが表示されます。
読み込み元メニューには現在開いているデータベースがリストアップされています。
メニューからデータベースを選択してください。
同一マクロが存在したときの選択肢は以下の3種類です。
- ユニークな名前を自動生成する
- 重複しないようにマクロ名を変更して読み込みます。通常はマクロ名の後に番号を付与します。
- 上書きしない
- 重複したマクロは取り込みません。
- 既存マクロを上書きする
- 重複したマクロは読み込み元の内容で上書きされます。