KikuchiLines X の使用方法

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はじめに

KikuchiLines XはRHEED(反射高速電子回折)条件下での菊池線およびRHEEDパターンの計算を行うプログラムです。 本プログラムは菊池線やRHEEDスポットの幾何学的な位置は計算できますが、強度は計算できません。

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操作の概要

プログラムを起動すると以下のようなウィンドウが表示されます。

New Window

計算条件を変更するには、右下の ボタンを押してください。 以下のような設定シートが現れます。

Settings Window

設定に用いるパラメータの詳細は 「計算パラメータの詳細」 で説明します。 設定を行ったら「確認」ボタンを押し、メインウィンドウの「計算開始」ボタンを押して計算を行います。 計算を行った例を以下に示します。

Calculated Window

図中の青色の線がExcess線 (RHEED図形で明るく見える線)、黄色の線がDefect線 (RHEED図形で暗く見える線)、緑色の丸は 1×1 のスポットです。 菊池線あるいは回折スポットをクリックすると赤色で表示され、下方の選択項目の指数欄にその指数が表示されます。

本プログラムは計算した菊池線/RHEEDスポットと実験で得たRHEED図形を重ねて表示することができます。 RHEED図形をオーバーレイするには、「RHEED図形選択」ボタンを押し、所望のRHEED図形を選択します。 本プログラムはほとんどの画像フォーマット (TIFF/JPEG/GIF/PICT/PDF等) をサポートします (OS付属のプレビューアプリケーションで開くことのできるものをサポートしています)。 ただし、本プログラムは画像処理機能はありませんので、あらかじめ見やすいように画像調整を行っておいてください。 また、画像の解像度は 72 dpi にしておくことをお勧めします。 高解像度の画像を用いると画質が落ちることがあります。

以下に、RHEED図形を読み込んだときの状態を示します。

Pattern Window

通常、読み込んだだけの状態ではRHEED図形と計算した図はサイズや位置が一致しません。 RHEED図形を移動するには 'option' キーを押しながらマウスボタンを押し、マウスをドラッグしてください。 読み込んだ図形の大きさはサイズスライダあるいはサイズスライダ横のフィールドに拡大率を入力することで変えることができます。 読み込んだ図が傾斜している場合には角度スライダあるいは角度スライダ横のフィールドに回転角を入力することで平行に修正することが可能です。 このように修正を行うと、下図のように計算と実験を一致させることができます。 なお、画像解像度が 72 dpi で、カメラ長が正しく入力されているときは拡大率1でサイズは一致します。 菊池線、計算したスポット、読み込んだRHEED図形はそれぞれ表示/非表示を切り替えられますので、適宜 ON/OFF してください。

計算した菊池線やオーバーレイしたRHEEDパターンは計算パラメータとともに保存することができます。 読み込んだRHEED図形は保存データに含まれますので、元の画像はなくても構いません。

Adjusted Window

メインウィンドウ右下の ボタンを押すと、設定内容をテキストファイルで表示したサブウィンドウが表示されます(下図)。 このテキストは編集や保存はできませんが、選択してコピーすることが可能です。必要に応じて利用してください。

Drawer Window
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計算パラメータの詳細

定義事項

計算パラメータを設定する前に下記の定義事項を理解しておく必要があります。 軸の設定は以下の図のようになっています。 図に示すように、z 軸は表面の法線方向、y 軸は基準方位の指数に平行な方向となり、x = y × z です。 ただし、指定した基準方位の指数が表面に平行でない場合には、面内のベクトルになるように計算し直されます。 入射電子線の波数ベクトル k0y 軸から φ (基準方位からの角度) だけ回転した方位で、 視射角 θ の方向から入射します。

Axes

蛍光板は入射電子線と対向するように配置されます (下図は表面を横から見た図)。 カメラ長とスクリーンの傾斜角は図のように定義されています。

Screen

下図は表面を上から見た図です。 スクリーン方位角 ρ は図のように定義されています。 実空間上の二次元の単位ベクトル (a1b1) の例が図に示してあります。 ここで、1×1 ユニットの単位ベクトル (a1b1) はそれぞれの x 成分と y 成分で定義されます。 このとき長さの単位は格子定数 (a0) です。 例えば、Si(111) 面 (a0 = 5.43Å) の場合は単位胞は菱形になり、 単位ベクトルの長さは a0/√2 です。 ここで入射方位が[11-2]であるとすると、 a1 = (-1/2√2, √3/2√2)、 b1 = (-1/2√2, -√3/2√2) となります。

再配列構造のユニットは 1×1 ユニットの単位ベクトル (a1b1) を用いて定義します。 例えば、7×7 構造の場合には a2 = (7, 0)、b2 = (0, 7)、 √3×√3 構造の場合には a2 = (1, -1)、b2 = (2, 1) となります。

Unit

設定パラメータ

バルク結晶

結晶構造メニュー
現時点では、単純立方格子、体心立方格子、面心立方格子、ダイヤモンド構造がサポートされています。
格子定数 (a0)
格子定数を Å の単位で入力します。
平均内部ポテンシャル
結晶の平均内部ポテンシャルを eV の単位で入力します。 結晶の内部ポテンシャルは屈折率に影響しており、例えばシリコンでは 11〜12 eV であることが知られています。 一般的には原子番号より若干小さな値をとると考えてよいでしょう。

面指数/方位

表面の面指数
表面の面指数の3つの成分を入力します。(1 1 1.5) のような非整数の値を与えることもできます。
基準方位の指数
y 軸の基準となる方位を入力します。(1 1 -1.5) のような非整数の値を与えることもできます。 基本的には表面平行のベクトルを指定しますが、平行でない場合には表面平行成分が使用されます。
基準方位からの角度
実際の電子線入射方位を基準方位からの回転角度で指定します。0°を入れると、電子線は y 軸の方向から入射します。

その他の計算/描画条件

入射電子線のエネルギ
入射電子線のエネルギを keV 単位で入力します。
カメラ長
カメラ長を cm 単位で入力します。
蛍光板サイズ
蛍光板の幅と高さを cm 単位で入力します。計算は蛍光板サイズで指定した範囲のみ行われます。なお、コンピュータ画面は 72 dpi として扱います。
蛍光板の傾斜/方位角
上図の定義に従って蛍光板の傾斜角と方位角を入力します。
指数の範囲
菊池線の計算を行う指数の上限を指定します。 ここで5を入れると、(-5 -5 -5) から (5 5 5) の範囲の指数を持つ線が計算対象となります。
h+k+l
ここでは3つの指数の総和の最大値を指定します。 この値が10で、指数範囲が5のときは、(5 5 0) は計算されますが、(5 5 1) は計算されません。
解像度
菊池線の計算精度を指定します。値が小さいほど精度は高くなりますが、計算時間がかかります。 通常は100〜200の値で十分でしょう。
Excess線/Defect線/選択項目の色
Excess線 (RHEEDパターンで明るく見える線)、defect線 (RHEEDパターンで暗く見える線)、選択した線 (あるいはスポット) の色を指定します。 透明度を指定することも可能です。なお、菊池バンドはバンドの両端をExcess線として表示します。
Defect線の非表示
チェックされているとDefect線を計算しません。

RHEED図形の計算

入射電子線の視射角
入射電子線の視射角を入力します。
1×1 ユニット
チェックボックスがチェックされていると 1×1 のRHEEDスポット位置を計算します。
チェックボックスの右の欄はコメントですので、自由に使用してください。
上記で説明したように、a1b1 は格子定数の単位で入力します。
スポットの色とサイズは画面表示に用いる色とスポットの円の半径を指定します。色は透明度の指定が可能です。
再配列n (n = 2~4)
チェックボックスがチェックされていると、設定された再配列構造に対応するRHEEDパターンを計算します。
チェックボックスの右の欄はコメントですので、自由に使用してください。
単位ベクトル anbn は上記で説明したように 1×1 のユニットを基準に定義します。
スポットの色とサイズはそれぞれの構造の画面表示に用いる色とスポットの円の半径を指定します。 色は透明度の指定が可能です。
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